みなさまは、愛の不時着ご覧になったことがありますか?
Netflixで放送され大ヒットしたドラマです。
ストーリーのメインは恋愛なのですけれども、コメディやアクションやサスペンスの要素も多分に盛り込まれており、視聴者を飽きさせない工夫がたくさんあります。
見たことない方は是非第1話だけでも見てみると、引き込まれる可能性があります。
このドラマはリズムが素晴らしいんです。
早い展開が続くかなと思ったら、長い尺で見せるようなシーンが出てきたり。
コメディーがずっと続くかなと思ったら、感動的なシーンが入ってきたり。
会話シーンが多くなったらその後に、静かな風景のシーンが出てくる。
そういう切り替えが、とても自然でいて、飽きさせず、心地いいんです。
このリズム感の設計はすごいなと思います。
どれだけのエネルギーと使って考え抜いたかが、素人の私でも分かります。
なぜ、わかるかというと、この愛の不時着を観た後に、
他の韓流や日本のドラマとかをみると、自分自身が退屈を感じるのが分かるのです。
他のドラマと比較することで、イベントとかタイミングとかセリフとか音楽とかが、本当に絶妙だというのがわかると思います。
※以下ネタバレ注意
あらすじ
あらすじを簡単に説明します。
前半は韓国のセレブ社長(女性)セリが北朝鮮に行く話
後半は北朝鮮のエリート軍人(男性)ジョンヒョクが韓国へ行く話
そして最後がスイスで2人で夏のバカンスの間だけ出会う話
ドラマの節々で描かれますが、この2人は若い時にスイスで会っていました。
統一への祈り
ドラマの監督や脚本家がどういう思いで作ったかは、日本のインターネットの情報だけではよくわからないのですが、
ドラマを見てると、メインテーマはもちろん恋愛なんです。
ただ、もう1つのテーマとして統合への祈りのようなものがあると思いました。
ここからなぜそう思ったかを説明していきます。
家族や身内として描かれる北朝鮮の人々
ドラマの中で、主人公のセリは韓国の財閥の娘です。とてもお金持ちのセレブです。
そんな彼女が北朝鮮行くわけですが、最初は浮いた存在であっても、持ち前の陽気さや機転を利かせて、北朝鮮の軍人の人や主婦の人と仲良くなっていきます。
ドラマの後半では、北朝鮮などの軍人の友人たちが韓国に来て、セレブの主人公をボディガードします。そして、最後また北朝鮮へ帰っていきます。
この過程を通じて、主人公の2人が恋愛関係になります。それは当然にしても、脇役の北朝鮮の人たちとセリもまた、仲間のようになっていきます。
ドラマの最初では、共産主義の規律に縛られてるような人々を描いてますが、途中からどんどん個性豊かな人間たちが表現されます。
北朝鮮の人は、最初は異人として描かれます。しかし、ドラマが進むと、そんな異人の遠い存在だった人たちが、熱い心を持った人たちとして描かれます。面白かったり、泣いたり笑ったりする人間たちとして描かれます。
その人たちとセリが交流していきます。
その交流を通じて、心のつながりができ、人と人のつながりができていきます。
国としては敵対関係にあるけれども、その中でも心がつながるということが描かれております。
これは実はすごいことで、戦争中は敵国を人間として描こうとはしないんです。日本の場合で言うと、戦時中は鬼畜米英という言葉を使って、アメリカ人やイギリス人を鬼のような存在として教育しました。
なぜなら、相手が人間になってしまったら、殺すことができなくなってしまうからです。
鬼だと思うから殺せるのです。
韓国と北朝鮮は、今は休戦はしていますが、まだ講和条約を結んだわけではありません。
外交上は戦争状態だけれども、一時的に戦争を休んでるという状態です。
このような状態なので、安易に相手を人間扱いはしにくいはずなんです。
もちろん、ほんの70年ほど前までは同じ国の人だったので、親しみは持ってるはずです。
それでも、北朝鮮と韓国は戦時中である以上、あそこまで北朝鮮の人を人間扱いする表現は、
画期的だったんじゃないかと思います。
38度線の描かれ方
次が38度線の描かれ方です。
ドラマの中で何回も38度線が出てきます。
中で印象に残ったのが、夕焼けの中に輝いている昔人が住んでいた民家です。
もう今は人が住んでいないのですけれども。
その民家でセリやジョンヒョクや部下の軍人たちが、お酒を飲んだり話をしたりします。
民家には昔お母さんと息子が住んでいて、その息子が朝鮮戦争に行った。無事に帰ったかは分からない。
そんなエピソードが出てきます。
他にも廃墟になった民家の映像や、北朝鮮の軍人の人が暇つぶしに韓国の国歌を歌うという場面も出てきます。
それらの画面では大抵、太陽の光が黄金色に38度線を染めている舞台になってます。
人はほとんどいなくて、パトロールする軍人だけです。
家はボロボロになって壊れています。
木々が鬱蒼としています。
そんなちょっと寂しい舞台を、夕日が優しく照らしてくれてます。
こういう表現にも、なんか祈りのようなものを感じました。
兄へ捧げるピアノ曲のメロディの秘密
このドラマにはキーとなるピアノ曲があります。
ジョンヒョクは昔ピアニストを目指していました。若い時に兄のために作った曲が、ドラマの大事なところで何回も何回も流れます。
この曲がですね、なんとなくなんですけど、韓国の国歌に似ているんです。
私そんなに音楽をやってるわけではないのですが、明確な共通点としては、どちらの曲もト長調です。
#が1個の曲です。
そしてメロディーの出だしが、レ→ソで同じです。
曲全体のコード進行はですね、感覚的には、3割ぐらい似てる感じです。
ただ、最初のテーマの4小説は、5割弱似てます。
ピアノ曲はとってもロマンチックな曲で、一方韓国の国家は行進曲のような堂々とした曲です。雰囲気は違うんです。
でもどこか似てるところがあります。
これは推測なんですけれども、監督か誰かが曲を作った人に、なんとな~く韓国国歌に似せて欲しい、という依頼を出したんじゃないかなと思います。
曲のタイトルも「兄のためのうた」です。
たまたま、ストーリー上兄のための曲になったのかもしれません。
でも、北朝鮮も韓国もお互いを同じ民族であるし、兄弟のようなものと思ってるでしょう。
その意味でも、親しくなりたいという祈りを感じます。
祖先の話
ドラマの途中でセリとジョンヒョクは、お互いの祖先の話をします。
特にストーリーには関係ないのですけれども、近しい間柄だったのね。家系的にも、という雰囲気は2人の間にできます。
もともと70年ほど前までは1つの国だったので、もうあっちこっちつながってるんですね。
日本で言うと、遠州の藤原家が遠藤、近江の藤原家が近藤になったようなものです。
どちらも昔々は藤原家でした。
こんな風に、結構元をたどると、同じ先祖だったりします。そんな2人が全く別の国にいるという、そして争ってるという。そんなリアルな世界に韓国や北朝鮮の人は生きてるわけです。
特にセリやジョンヒョクは、生まれた時から国は別れていたわけです。でも祖先は一緒と言う。複雑な状態にいるのが描かれてます。
そんな複雑なことはあるけれども、結構近しい先祖だったのねというエピソードは、元々同じだったんだよという思いを伝えたかったのだと思います。
多分ここは日本の人には、よくわからなくてフーンとスルーしやすい箇所でしょうけど、韓国の人にはしみじみ感じるものがあるところだったと思います。
スイスで出会う二人
ラストで2人はスイスで奇跡的に出会います。
それから2人が毎年夏のバカンスの季節に、予定を合わせてスイスで過ごしています。
この話は7月7日の織姫と彦星の話です。
七夕の話ですね。
七夕の話はもともと中国から来たものです。それは韓国にももちろん来ています。
1年に1回しか会えないその悲しみと
1年に1回だけ会えるその喜びを
韓国の人も文化的にもよく体験しております。
離れ離れになってしまったけれども、なかなか会うことができない。
間に大きな川が流れていて、橋がないと渡れない。
橋は1年に1回しか出てこない。
そんな橋を待ち遠しにしている2人を七夕は描いております。
七夕と同じように、愛の不時着の二人も、1年に1回の出会いを心待ちにしてます。
そしてそれは、心待ちにしているのは、韓国の民衆であり北朝鮮の民衆であります。
訳合って、2つに分断されていますが、いつか和平を結び、統一され、お互いに出会えるはずと信じてる。そんな祈りが、ここに描かれてると思います。
スイスというのは永世中立国です。武器を持って侵略することをやめようという理念を持った国です。
争ってる国同士の愛し合う二人が、一時その永世中立国のスイスで、平和な時間を過ごします。
幸せな時間を過ごします。
早くそうなりたいなという祈りを、感じました。
まとめ
愛の不時着はとっても面白いドラマです。
Netflixでもずっと一番になっていました。
そんなドラマのあちこちに、統一への祈りや希望が感じられました。
まだまだ他にもあるかもしれませんが、気付いた点を書いてみました。
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